こんにちは、早川です。
「正しい方向」のコラムでは、どんなタイトな押さえ込みであっても、ほとんどの場合は逃げ道があると書きました。逆にいえば、逃げることが不可能な押さえ込みもあると思います。
そんな時どうすれば良いか。
結論としてまず私は逃げません。押さえ込まれてしまったものは仕方ありません。無駄な力を極力使わず、押さえ込ませます。白帯の時から今まで私はずっとそうです。
もちろん、逃げられる可能性が有る最後の瞬間まではあがきますが、その一線を越えて以降は、すぐにサブミッション、またはポジションの進展の防御のみに集中します。この意識の転換が遅れると命取りになります。
相手に完全に押さえ込まれた生徒に対して、私が「動け、暴れろ、逃げろ!」と激を飛ばす姿を見た事がある人はいるでしょうか。
私はそのようなアドバイスをしたことはありません。
何故なら私自身が根っからの「あきらめ派」だったからです。具体的なエスケープ方法が提示出来ない限りは、無駄な体力を使わせないこと、そしてミスをしないことを選ばせます。あきらめると言っても、全てを投げ出す訳ではありません。
そこからの展開ですが、私の考え方はずばりこうです。
まずセルフディフェンスの観点からは、「すぐにポジションを戻す必要などない」ということです。これはグレイシー系のアカデミー出身の方ならば既知の原則だと思います。「ポジションは戻せる時に戻す」、これが柔術の鉄則です。その為にはむしろ体力を温存する必要があります。
次に競技の観点からは、相手にストーリング(膠着)の反則の警告が与えられるのを待ちます。非常に消極的な考え方なので、「まさかそれがお前の奥義なの?」とみなさんから嘲笑を受けてしまうかもしれません。
しかし、すでにパスガードを許してしまったほどの強い対戦相手が、1ミリも隙間を与えないように押さえ込みに固執しているわけです。むやみに暴れたからといって何かミラクルが起こるとは思えません。消去法で考えると、私にはこの戦術しかないのです。
よって、セルフディフェンス的にも、競技的にも、私の選択は同じになります。
余談ですが、私自身が過去にパスガードされて押さえ込まれた対戦相手を、以下に全て列記してみました。
どのように技を掛けられたか、いずれのケースについてもよく覚えています。
日本人では、白帯時代の対戦ですが、阿部和也選手、東北大学柔道部OBの方のお二人です。
1.阿部選手にはいわゆる脇差しパスを掛けられました。
2.東北大OBの方にはハーフガードからの足抜きを掛けられました。
これ以降に押さえ込まれたのは、黒帯になってから対戦したレオジーニョ、セウソビニシス、マルコバルボーザ、マリオヘイス選手の4選手のみです。勝敗はともかく試合でパスガードされたのは後にも先にもこの6ケースのみでした。
3.レオジーニョ選手にはスタッキングパスを掛けられました。
4.セウソビニシス選手にはショルダードライブパスを掛けられました。
5.マルコバルボーザ選手にはいわゆる脇差しパスを掛けられました。
6.マリオヘイス選手にはシッティングパスを掛けられました。
これらの技は、現在の私のパスガードの基幹テクニックになっています。掛けられた技というのは、強く印象に残るものです。